大会基調
                    研 究 主 題
    「他と共に自分を向上させる自己教育力の育成」
      〜「基礎基本をふまえ、学び方を学ぶ授業の創造」〜
 
1,はじめに

 21世紀を目前に控え、日本の社会は国際化、情報化、科学技術の発展、そして価値観の多様化など大きな転換期を迎えています。
 この転換期の日本の現状の一つに、少年犯罪の増加、道徳観の欠如など社会の一員としての自覚に欠けた行為が多く見られます。このことを、社会科に振り返ってみると、社会科の究極的な目標である、「公民的な資質」が十分に培われていないのではないかと考えられます。
 そこで、「社会は、社会科に何を求めているのか。その求めに我々はどう応えていくのか。そのために、どのような授業、学習活動を創造することがその求めに応えるのか。」このことが、私たちの問題意識となって生まれてきました。
 まず、今生徒達に求められている力は「状況を的確に把握し、自ら課題を発見し、学び、考え、実践する自主的かつ主体的な能力」言い換えれば「生きる力」であると思います。しかし、このような能力を培うことこそ大変困難であると思います。それは、今までの知識注入に偏った授業では育成することが難しく、さりとて、生徒のなすがままに委ねることでは、十分に培われにくいものだからです。
 私たちは、この「生きる力」を生徒達に育成するために、「条件(状況)」づくりを大切にしたいと考えました。
 それは、やりがいのある問題、それに向かう快さ、取り組む自由さ、そして困難を乗り越えた歓びなどを伴う時に、生徒はさまざまな面で自主的になるのではないかと考えました。
 この条件を作る時に重要なのは、私たちの先入観を廃し、生徒の学習活動における、やりがい、快さ、自由さ、そして困難をのりこた歓びなどとは何かを深く掘り下げ、生徒の学習活動の中でそれらを実感したり、体感したりさせることが重要であると思います。
 社会の大きな変動は我々自身に発想やイメージや見方、考え方に大きな転換を迫っていると考えています。このことは我々が授業や生徒の学習活動に対して抱いている、これまでの先入観や既成概念からいかに自由でいられるかが大きなポイントであると思います。 また、私達が生徒に求める能力即ち、主体的かつ自主的能力が実は我々教師の側にも問われていると認識することも大切ではないでしょうか。


2,研究主題設定の理由

 混沌とし、変化の度合いを速める今日の社会状況において、既存の知識とその量的な伝授に偏った授業では、21世紀を生きる生徒にとっての「生きる力」にはなり得ません。現代社会がつきつけている諸課題を克服するためには、課題を自ら発見し、その解決方法を見いだし、主体的に生きていく人間(=自己教育力を持った人間)を育てることが、きわめて重要であると考えます。
 また、第15期中央教育審議会答申に「自らを律しつつ、他人と協調し、他人を思いやる心や感動する心など豊かな人間性とたくましく生きるための健康や体力を育む(他と共に自分を向上させる)」とあるように、他との関わり合いの中で自ら高めていくという視点も人間関係の本来のあり方が損なわれている状況ではより不可欠になると考えます。
 以上のことから、本研究会では、一人一人を尊重し協力の大切さを学ぶ中で、自ら課題を発見・克服し主体的に生きる力を持つ人間を育てるために、「他とともに自分を向上させる自己教育力の育成」という研究主題を設定しました。


3,テーマ考察


「他と共に自分を向上させる自己教育力の育成」
 

(1)他と関わることの意義
@自分の考えを表現する事であり、それは自分の考えを整理し、自分を発見すること(自分を知ること) 
A自分にはない発想や考え方、見方、捉え方に気づき他者の役割の重要性を知ること(尊敬の気持ち、協力の重要性を知る) 


自己教育力即ち相互教育力である
 

(2)自己教育力の源 
 生徒が歓びをもって学習をするのが学びの本来のあり方だと思います。しかし近年、学習が苦しいものと生徒達は誤解をするようになってしまっているのではないでしょうか?
 このことは私たち教師の責任も大きいと思います。もう一度原点に返り生徒達が目を輝かせ、歓びを持って学習していく授業を作っていく必要があると思います。
 学習が楽しいこと、歓びを持って学べる条件などこそ自己教育力が養われる原点と考えます。

(3)歓びをどう引き出すか
T,自分の力が引き上がる実感を大切にする
 ただ興味を持っているものを扱えば歓びかというと、それは学習における歓びではないと思います。学習における歓びは、生徒が学ぶことによって「自分の力が引き上がる」のを実感したときだと思います。このことは「自分の認識が広がり、深められるようになったり、ものの見方や考え方が深められるようになる」などだと思います。生徒はこの時、快さを感じ、ますます学ぼうという気持ちになります。
 授業の中においてこのような力がついていると実感できるような状況を設定することが大切だと考えます。
 例えば、ノートをもっと利用させ、「疑問点・自分の考え」などをいつも書かせるようにしていき、自分の疑問点の変化や考え方の変化がわかるようにするなどの工夫をし、自分の成長を見えるようにするのも一つの方法だと思います。

U,課題を自らの力で克服する
 次に、わからないことがわかるようになることが、歓びにつながると思います。
 しかし、単に知識が増えるだけでは真の歓びにはならないと思います。自分の本当に追究したいもの、切実感のある課題が明らかになる歓びは大きいと思います。生徒にとってその課題は、多少の抵抗感があっても、やりがいのある課題だと思います。さらに、その課題の解決に向け、ただ教えてもらうのではなく、自分の努力によって導いたものであれば、なおさらその歓び大きいはずです。
 教師はそのような力を培わせていくため、課題作りから、その解決までの過程でさまざまな指導とともに、生徒が主体的に学ぶための手立てを講じる必要があると考えます。

V,他と関わることの大切さを学ぶ 
 さらにもっと大きな歓びを引き出させることを考えると、1人の知恵よりも複数の知恵こそ深く大きなものであることを体験させたい。他と関わることにより、自分を発見し、他のすばらしい考えを学び、それを合わせることによって、より深く、広い視野を持ったものにたどり着くことを実感するような体験を大切にしたい。
 一人の力では、行き詰まり苦しい時
(困難にぶつかった時)、友達の励ましや協力、力を合わせることがなんとすばらしいことか、そしてそれが解決へと導かれたとき真の歓びを体験できると思います。
 このような「他と共に自分を向上させる力」は、これからの社会科にとって、とても大切な力だと思います。

W,評価の工夫
 生徒にとって教師の一言はとても重要です。教師の一言で歓びを見出し、やる気を持って学習に取り組みます。 もちろんただ誉めればよい、おこればよいのではなく、適切な評価こそ大切です。人間は必ず認めてもらいたいという願望を持っています。この気持ちを学習活動に必ず取り入れることが重要だと考えます。
 また教師だけでなく仲間からの評価も大切です。時には教師の評価以上に歓びを見出す場合もあります。
 常に教師が生徒を評価するという考え方から、生徒どうし評価し合う場面を授業の中でもっとつくり、互いに学び合う集団を作ることが大変重要だと考えました。これが「他とともに学び合う」ことになると思います。そして、この相互評価の場面こそが、生徒が教材になりうるという点で、大変重要だと思います。
 このように生徒が歓びをもって学習にあたるためには、従来のような知識詰め込み教育から生徒の立場に立ち、生徒の思考に合わせ、歓びをもって学べるように時間を保障する必要があると思います。

4,授業づくり

(1)学ぶ歓びを引き出す教材の工夫
 *教材としてふさわしいもの→生徒の興味関心を引き起こし、考えてみたくなるもの(本質に迫りやすく、現在と関連づけられて切実感があるもの)
T,興味関心を引き出す教材の工夫
 教師は生徒が興味関心をいだきやすいものを常に考え用意する必要があります。そのためには、教師として「生徒の感性、考え方、興味などを見抜く目」が必要であり、さらに教えたいものを生徒が興味関心をもって学ぶようにするため「適切な教材を見つけ、工夫して、それに結びつけられる技術」も必要だと思います。

U,現代社会の課題をとらえる
 時代が突きつけているもの(現代社会の矛盾)やリアリテイのあるものが教材としてふさわしいと思います。 常にニュース、新聞、家庭の話題、耳に入ってくるもので本質に迫れるもので、矛盾があり、疑問がおこる教材が生徒の知的好奇心を高めさせ、やりがいのある課題となると考えました。

V,当事者意識を持たせる
 生徒本人が当事者として考えられることができるもの(切実感のある課題)が教材として有効だと思います。
 扱う内容を常に生徒の身近なものに感じさせたり、結びつける技術が必要です。学ぶものが必要性を感じ自分のためになると感じられれば、学習意欲はさらに高まります。そして学んだものが自分の生活に生きることにつながれば、学習が真に身になっていくと思いますし、これからの社会科学習にとって大切なことだと思います。

(2)「学び」の深め方
T,本質に迫る授業の創造

概念化する
 

本質を理解すること
 

 現象から本質的なものと非本質的なものを区別し、それをそのものたらしめる固有の性質をつかむこと(=概念化)が大切と考えました。
 この概念化ができれば、その現象が完全に自分のものになり、応用が利きます。応用が利くと言うことは、自分のものとしてそれを生かせることになります。
 このような本質を追究する力が備われば、時代がいかに変化しようと、どのような状況になっても、正しく物事を見すえ、社会に適応できる力となります。これからの社会科教育で生徒に身につけさせる力としてとても重要なものだと思います。

U,追究心を育てる

既知を未知に
 

 自ら課題を発見し、追究する力はこれからの社会科教育にとってとても重要です。追究心の根源は、「知りたい」「もっと詳しく知りたい」ということであり、その動機の原点は切実感だと思います。その切実感のある疑問を発見する力を生徒に養うためには、一つに生徒が「知っている」と思っていることが、実は少しもわかっていない「未知」の状態であることに気づかせることだと思います。
 追究心を育てるために、未知に気づかせ、調べる意欲を高め、それを次々と深化させていくように、ポイントどころで「ゆさぶり」を入れることが、学びを深めさせる教師の役割として大切だと思います。
 常に「問題」を追究する授業こそがこれからの学びに必要だと思います。

V,学習の組織化

学習集団をつくる
 

 単なる機械的な班などの集団から互いに高め合える機能的(組織的)な学習集団を作ることがこれからの授業としてより大切にしていかなければならないと思います。集団としての質の高まり、集団の中での個人の役割を追究し、この集団の質が高まれば、より高度な「学び」が生徒達から生まれ、他と共に力がついていくと思います。
 社会科の授業では授業内容を学ばせることも、もちろん重要ですが、もう一つ授業を通して他との関わり方、他との協調の仕方、他の良いところを学ぶ技術、集団として知恵を出し合いより良いものを創造できる技術、人にわかりやすく説明する表現力などの技術も、学びを深めていくためには、とても重要だと思います。

W,時間空間をこえる

学習活動の多様化
 授業の時間だけが授業ではない
 

 より学習を深めるには、授業と授業の間も重要な学習の場であると考えます。次の学習に知的好奇心をつなげ、思考したり研究したり、課題を追究する大切な場であると考えます。その中で生徒の思考力や探求心は培われると思います。この授業間に何を与えていくかという視点も大切にして行くべきだと思います。また、その間に生徒一人ひとりに対する個別的な指導などを充実して行うことも重要であると思います。   
 これからの授業はこのように今までの常識に捕らわれない発想や考え方が必要だと思います。


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